筆跡診断 野口英世の放蕩グセ

前回、五千円札でおなじみの樋口一葉を取り上げましたが、
今回は庶民にはさらになじみ深い(笑)千円札のこの人。

黄熱病や梅毒等の研究で知られ、
ノーベル生理学・医学賞候補に3度も名前が挙がった、
野口英世を取り上げます。

彼の顕微鏡観察による研究は、
想定される膨大な実験パターンを驚異的なスピードと正確さで行う
実践的スタイルでした。

この熱心な研究姿勢から、
当時のアメリカ医学界では野口を
「実験マシーン」「日本人は睡眠を取らない」
などと揶揄する声もありました。

野口自身「ナポレオンにできたのだから、私にもできる」と宣言。

3時間しか睡眠を取らなかったというから驚きです。

一方で、野口には放蕩好きな浪費家という側面もありました。

要領の良さや世渡りの巧みさは天下一品。

恩師や友人を巧妙に口説いて再三にわたり多額の借金を重ねました。

野口の才能を見出した血脇守之助からたび重なる資金援助を受けるも、
放蕩グセはやまず。

留学金すら遊興で溶かした折、
金貸しに頼み資金調達した暁には、
さすがの野口も感動の涙を流したそうです。#千円札

 

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掛け軸の「四」、書簡の「乱」「申」「言」などに散見される
閉空間(線で囲む閉じられた空間)の下が大きく開いた文字(下部接筆開)は、
金運的に「貯める」意識が希薄で、
入ったらすぐ使ってしまうダダ漏れ状態を示します。

借金まみれの父を幼い頃から見ていた野口にとって、
父は反面教師どころか、借金に対する罪悪感を削ぎ、
放蕩におぼれる性格を形成してしまったようで、
筆跡にもしっかりとその痕跡が残っていたということです。

野口の筆跡全体に言えることですが、
文字の右上の角部分がすべて丸まっています。

この「転折丸」は進取の精神の旺盛さとともにルーズさも表わします。

進取の気性は勉学や研究に対する真摯な姿勢に、
ルーズさは金遣いの荒さにと、
全く対照的な性格としてそれぞれ表れています。

開空間(へんとつくりの間)の広さも、
お金や人に恵まれた環境と相通ずるものがあります。

1922年(大正11年)、
血脇がアメリカを訪れたとき、野口は連日つきっきりで案内し、
血脇が講演する際には「私の大恩人の血脇守之助先生です」と紹介。

大統領にまでも会わせました。

書簡にも掛け軸にも、義理人情の厚さを表わす連綿線が多く見られます。

血脇から受けた恩を倍返しするあたりは、連綿型の成せる業でしょうか。

野口は1900年にアメリカへ渡航してから
28年に没するまで一度しか日本に帰国していませんが、
そのたった一度の帰国は、
年老いた母と再会を果たすためだったと言われており、
母親思いの一面も連綿型からうなずけるところがあります。

書簡中央の年号やその前行の「島」などに大きな弧を描いた大弧型が、
書簡末尾の2つの「閣」にはどっしりした安定感のある弘法型もあり、
「野口」の「野」の字「予」に深奥行型も見られます。

いずれも「大器」「繁栄」「大物」を表わす希少な特徴です。

私生活ではお金や女にだらしない面が目立つ野口でしたが、
大金を一晩で使い果たす放蕩ぶりも大物の証だったとしたら
皮肉なものです。

それ以上に、これだけお金の使い方が無頓着極まりなかった英世が
千円札の顔になっているのは、実に面白いものです(笑)

否、それ以上に、世界にその名をとどめたスケールの大きさは、
「大弧」「弘法」「深奥行」が表す大物感とリンクしている
と感じられてなりません。